二十一世紀に向かって、今世紀の最後の数年間に、一つの大きなパラダイムシフトが訪れるだろう。
情報家電と一般に呼ばれる機器によってもたらされる生活の変化であり、人々の意識の変化である。
情報家電が登場するまでの数年の間は、世界中のハイテク市場は産みの苦しみを経験することになるだろう。
プロセスを、人は後にダウンサイジング不況と呼ぶようになる。
情報家電は難産の末に生まれてくることになる。
いままでの情報のもつ意味を根底から覆すパラダイムシフトをともなうからである。
たとえば、将来、人々はインターネットを利用して外出せずに用事をすませるだけでなく、インターネットを介して居ながらにして旅行にいくことになる。
コンピュータの入出力機器として、自分が動き回る「入出力機器」が登場する。
ダウンサイジングという言葉は、いまのところ、大型コンピュータからワークステーションやパソコンなどの小型機に乗り換えることを指しているが、うち言葉は、相当違う意味にパラダイムシフトしていくことになる。
ダウンサイジングという言葉は、近い将来にコンピュータマーケットが消失して、情報家電の一部に飲み込まれることを意味するようになるだろう。
冷戦終結後の平和の報酬として、深刻なエネルギー危機が訪れるのは避けられない。
エネルギー消費の拡大なき先進国の持続的な経済成長のために、インターネット社会が実現するだろう。
冷戦集結による軍事通信技術の民生移管は、ネットワーク社会を構築するのに十分な通信技術を提供している。
半導体産業、自動車産業の行く末として、ソーラービジネスが一つの戦略的な切り札になるだろう。
日本の場合、公正で効ただ、プロセスでの救いの道が一つだけ残されている。
本書を読み進むなかで、しだいに明らかにされていく。
日本のハイテク産業の行く末は、いま、それぞれのハイテク企業のトップマネージメントの先見の明と、胸先一つにかかって、ダウンサイジング不況の末に、コンピュータ産業は情報家電産業にパラダイムシフトするだろう。
ダウンサイジング不況を経て、情報家電によって川下化することで、二十一世紀にはハイテク産業の市場規模は現在の一○倍以上に成長すると見込まれる。
コンピュータ関連のハイテク産業は、自動車産業とともに、日本の今日の繁栄を築いたといっても過言ではない。
ダウンサイジング不況に際して、日本の主力産業は、塗炭の苦しみを味わうことになる。
売上高が完全に消滅していくのを日々目の当たりにするのだから率的な店頭証券市場が存在していないがために、ドラスティックな変化に際して、本来登場するはずの二ユーピジネスの台頭はきわめて困難になるといえる。
国では、おそらく既存のハイテク五社が中心になって、二十一世紀へのパラダイムシフトにほとんど右も左もわからずに当惑するばかりに直面することになるだろう。
八九年の冷戦の終結と、ダウンサイジングと顧客ニーズのサチュレーションにより、情報ハイテク産業は、業種全体で、これから売上高、利益を、何年間にもわたって毎年大きく減らしていくことになった。
流れのなかで、雇用吸収力は大きく低下していく。
顧客がいままで必要としていたものがようやくつくれるようになった結果、顧客の満足度(CS)が向上し、買い替え需要が減退してきている。
製品価格の、大幅な下落のため、従業員を十分に養えなくなるだろう。
出荷数量はとりあえず増加するが、買い替え需要がきわめて期待薄になる。
価格の下落はダウンサイジングによるものだけでなく、買い替え需要の飽和のためでもある。
雇用吸収力の低下と売上高の低下は、一つの産業革命が終わったことを意味する。
冷戦の終結によるアメリカの軍需ハイテク産業に端を発するハイテク不況は、日本のようにハイテク関連産業セクターへのGDP依存度が高い国々を直撃した。
失業者の氾濫という意味での不況としては、戦後はじめて経験する不況である。
不況は、次の大規模な雇用を発生させる業種の登場を待つまで回復しないだろう。
世界経済は、かってない不況の嵐のなかで、次の産業革命を待つことになった。
ダウンサイジングの副作用で生じる流通構造改革は、とくに流通小売業に対して深刻な変化をもたらすだろう。
一九九○年代前半の日本は、ダウンサイジング不況のなかで、二つの四半期を過ごすことになった。
コンピュータなどのハイテク企業は、つねに成長を続けるものと一般には思い込まれてきた。
それゆえハイテク企業の無配は、世界的にも認められてきた。
ハイテク成長神話の崩壊は、ハイテク企業に株価の数%の配当をすることを余儀なくさせるだろう。
バブル崩壊不況で片づけられているが、戦後日本がはじめて経験する不況が、信じられないほどのスピードでやってきた。
ハイテク産業を襲うダウンサイジング不況である。
ダウンサイジング不況は、世界中でハイテク関連製造業を展開している日本にとっては、バブル崩壊の影響とは比べものにならないほど深刻である。
大型計算機に代表されるハイテク産業を、ダウンサイジング不況は直撃した。
大型計算機をはじめとするあらゆるラインのプロダクトは商品価値を失い、現行業務が台湾製の互換パソコンに置き換えられることになりつつある。
メモリに代表される日本の半導体産業や家電産業、自動車産業は、顧客ニーズのサチュレーションにより、過剰設備投資下の需要飽和を経験することになった。
過剰設備投資後の設備投資利回りが、ゼロから金利負担分だけのマイナスに転じた。
結果、利益なき繁忙のため、売上高が現状維持か微減であるのにもかかわらず、恒常的に営業赤字を計上することとなった。
ハイテク企業は、成長神話の崩壊から極端な高PER(株価収益率)も維持できず、高配当政策をとらないかぎり株価維持が不可能になった。
しかも株価下落後には、投資銀行によるM&A(企業の合併・買収)、TOB(株式公開買付け)が待ち受けている。
企業は、日本の繁栄をいままで支えてきたわけだが、創業も浅く、工場も余裕をもって建てられていないため、土地含みに頼ることができず、また営業赤字下ではファイナンスもできない。
すでに現時点で、成長の背景の設備投資の資金も、研究投資も大幅カットせざるを得なくなった。
ハイテク企業の上場維持のための唯一の方策は、自らすすんで赤字部門の売却と撤退、工場売却と大規模なレイオフに踏み切ることである。
営業黒字転換のためには、場合によっては九○%レイオフも必要になるかもしれない。
さもなければ株価下落の結果、投資銀行のM&Aにより、企業解体、部門解体、工場売却、資産売却を強要されるのを避けられないだろう。
第四次産業革命は、ダウンサイジング不況のなかに終わりを告げようとしている。
転機がいかに訪れたか、今後どこへいくのだろうか?行き先はさまざまなパラメーターにさらされて見えないが、これまでの流れと状況を考えると、ダウンサイジングの一つの行く末が見えてくる。
ディジタル双方向(インタラクティブ)テレビジョンである。
大きな流れが見えずに、やみくもに前へ進むのはどうだろう。
大きな川下産業は、社会システムに大きな変革をもたらすだろう。
ディジタル双方向テレビの普及による、半導体産業の現在の一○倍のオーダーに及ぶ成長の結果、時代はさらに次の産業を日本のハイテク産業に要請する。
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